工学院大学 工学部 機械システム工学科 計画工学研究室

計画工学研究室
工学院大学
機械システム工学科

 システムという言葉は、システム工学的観点からだけではなく、様々な観点からアプローチがなされています。 したがって、その定義ひとつとっても、議論百出することになります。 なかには、システムの定義など明確にはできないといわれることもあるため、学生諸君はますます混乱することになります。  

 

 しかしながら、工学的に用語を取り扱うときに定義が明確でないということは好ましくありません。 したがって、「システム工学」では、どの専門書もほぼ似たような定義が明確になされています。 講義では、まず、この点について学生の充分な理解が得られるよう努力をしています。 さらに興味のある学生は、「システム工学」の講義で学んだ定義を頭において、社会学など他の分野の「システム」という用語に対する考え方を学んで、比較してみるとよいでしょう。 そうすれば、無用の混乱は避けられるものと思われます。  

 

 さて、システム的な考え方の発展について語るうえで、アメリカのアポロ計画を忘れてはなりません。 1957年10月に、ソ連が世界初の人工衛星「スプートニク1号」を、地球周回軌道にのせることに成功しました。 このニュースに脅威を感じたアメリカは、陸軍に人工衛星の開発を急ぐよう命じ、1958年1月にやっと、アメリカ初の人工衛星「エクスプローラ1号」の打ち上げに成功しました。 (航空宇宙局NASAが組織されたのは、1958年10月のことです。)そして、そのたった3年後の1961年5月にアメリカ大統領J.F.ケネディは、1960年代までに月に人間を立たせるとの演説を行ったのです。 工学部の学生であれば、その当時の技術レベルと始まったばかりの宇宙開発の歴史を考え合わせれば、いかに驚くべき演説であったかはすぐ理解できるでしょう。  
  アポロ  
 すでに、純粋な軍事目的を除く、宇宙計画の運用はNASAがすべて担当していましたが、ケネディの演説どおりに計画を遂行するとなれば、多額の予算と多くの人員が投入されたとしても、なお不安がありました。 それは、固有技術の種類が多くなり、またそれぞれの技術レベルが高くなればなるほど、全体としての統制がとれず、予想以上に計画が伸びる可能性が高いからです。 従って、それらの統制に必要不可欠な考え方として、システム的アプローチ法が採用されたのです。 この計画は、「アポロ計画」と呼ばれ、システム的な考え方とそれに基づいた手法をふんだんに用いることにより、1969年に予定通り遂行されたのです。  
 アポロ計画では、まず「ルナ・オービター」などの無人探査機による月面調査が重ねられ、その間サターンV型ロケットの開発が進められました。  
 ところが、1967年1月の地上実験でアポロ宇宙船内に火災が発生し、3人の宇宙飛行士全員が死亡するという事故が起きたのです。この事故の原因も、信頼性を向上させるための設計変更が、完全に各部署に周知徹底されていなかったことが原因といわれ、システム的考え方の徹底は更に加速しました。  
 そして、1968年10月、アポロ7号が11日間の地球周回を行い、同12月には、アポロ8号が月を10周周回しました。  
 さらに、翌年3月にアポロ9号が月着陸船操作の実験、同5月にアポロ10号が月面まで14Kmまで接近しました。  
 そして、ついに同年7月16日にアポロ11号が打ち上げられ、4日後の午後4時17分(日本時間21日午前5時17分39秒)に、月面着陸を成功させたのです。    はやぶさ2   はやぶさ1  

 

 この歴史的瞬間を当時興奮して見つめていた日本の若者たちも60歳前後となり、実際に宇宙飛行士になった人もいれば、宇宙開発に従事したり、そうでなくても、色々な方面で「アポロの偉業」をお手本として、エンジニアになり活躍されている人は数知れないほどいます。  
 近年では、JAXA(宇宙航空研究開発機構)における小惑星探査機「はやぶさ」の活躍が記憶に新しい。これまでの探査で、初めて月よりも遠い惑星から物質を持って帰ることに成功するなど、宇宙開発の現場では今も多くの計画が立案、実行されています。  
画像提供 提供:JAXA